コンセプトができて素晴らしい設計士さんとも出会えましたので、次に取り組んだのは「安全性」でした。
いくら駅に近くて便利でも、川の氾濫や崖崩れのリスクがある場所は避けないといけませんし、長期間維持していくには地盤も重要な要素となります。
いくつかの候補地があったのですが、クライテリアを設定して土地の選定をしました。
- 津波のリスクが低いこと
- 川や崖の近くではないこと
- なるべくフラットな土地
- 軟弱地盤ではないこと
予算との兼ね合いもあるので、こういった観点で見ると、意外に理想的な土地というのは多くない事が分かります。例えば東京都内でも海抜0m地帯などは価格的に見合ったとしても、長期的なリスクは大きいと言えます。
藤沢市が公開している津波と土砂災害・洪水ハザードマップを調べたのですが、海外に近すぎる地域は当然ながら津波のリスクが高く、内陸であっても引地川の流域は津波・洪水のリスクがあります。「The Terrace 湘南辻堂」がある辻堂四丁目の地域(☺のある場所)はリスクが低いことが分かります。


藤沢市土砂災害・洪水ハザードマップ(スマイルマークが当物件の位置)
よかった、問題ないや!と思ったのですが、もう一点確認しておきたい事がありました。それは「地盤」です。調べてみると辻堂エリアの地盤は相模湾沿岸域に発達した砂堆上にあるので、地震に対して揺れやすいのではないかという点が気になりました。ジオテック株式会社という会社のサイトに藤沢市の地盤に関する説明があり、辻堂四丁目は「砂堆・砂丘」という地盤だそうです。
砂堆・砂丘:周囲の海岸低地と比べ海抜高度がわずかに高く、海岸線に平行に分布している。海の波や潮流によって形成された砂浜が成長した微高地を砂堆・砂州と言い、更に堆積した砂が風によって運ばれ小高い丘になったものが砂丘である。浅い深度から砂が堆積し、深度を増す毎に締っていく傾向にあり、住宅地盤としては、比較的良好な場合が多い。しかし、表層に緩い砂が厚く被覆する場合には、基礎補強対策が必要となることがある。
ジオテック会部式会社サイトから引用
また、藤沢市のサイトにも「揺れやすさマップ」というのがあり、調べてみると予想される最大の地震(南関東地震)が発生した際の震度6.1-6.2程度になるようです。日本全国どこでも震災のリスクがある訳ですが、やはり地震に対しては揺れやすい地盤であることが分かりました。

対策
今回のプロジェクトで選定した土地には大きな一戸建ての古家が建っていましたが、それを取り壊してアパートを建てる前にキチンとした地盤の調査を行うことにしました。一戸建てと比べて20戸のアパートは重くなるはずです。建物と違って地盤や基礎は後から修正が効かないため、費用と時間もかかるのですが地盤調査を行いました。
今回は一般家屋でよく使われる「スウェーデン式」と言われるスクリューを差し込んでピンポイントで調べる方法ではなく、「表面波探査法」と言う、地面を実際にいくつかの周波数で振動させてその波形を測定するという方法を採用しました。そうすることで費用は高額になりますが地盤全体をより詳しく調べることができました。

結果的に、地表から60㎝より深い部分は強度が充分あるものの、むしろ浅い表層の部分で建物を支える「支持力」が足りないことが分かりました。
ちなみに「支持力」というのは一般家屋では20Nほどあればよいそうで、当物件は構造計算上を行った結果15Nの支持力あれば充分とされたのですが、厳しめのマージンを取って25Nに設定しました。

地盤改良の方法も色々あって硬い岩盤まで杭を打つ方法もあるのですが、この地域は砂堆なので杭打ちには向いておらず、地面を掘り返して砕石(もしくは固化材)を敷き詰め、そこに散水をしてローラーなどで転圧する方法を、複数回行う方法を採用しました。これによってまんべんなく地盤を強化することができます。

作業の様子はこんな感じで、一層ごとに深さを測って固化材を撒き、ローラーで転圧していくという、かなり大がかりな工事になりました。

最後に表面を仕上げて圧縮試験を行い、作業が完了しました。

実際に住まれる方にとってはあまり興味のない話題かも知れませんが、災害の多い日本ではこういった事前チェックや対策はいくらやってもやり過ぎにはならないと思います。住んで頂く人たちが安心して生活できるまさに「基礎」の部分になりますので、ここまでこだわって対策を行いました。
もし今後ご自身で家を建てたり物件を購入される際には、ぜひこういった情報も参考にしていただければ幸いです。
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